許可・登録の要件に注意しましょう!
建設業などの許可は、要件を満たさなければ許可の取り消し・剥奪をされてしまうことがあります。
そして許可が一旦取り消し・剥奪されてしまうと、許可によってはそこから5年間、許可の再取得ができなくなってしまう場合などがあります。となると、実質的に建設業などの営業ができなくなり、事業の継続が危うくなるので注意をしたいところです。
今回は建設業、建設コンサルタント業、測量業、建築士事務所登録、労働者派遣事業、古物商の許可・登録要件についてお話します。
建設業 許可要件
・経営業務の管理責任者(経管)がいること(常勤役員)
・専任技術者(専技)がいること(常勤)
許可を受けようとする業種に係る工事に関し、資格・実務経験等を有する技術者の配置が必要
・財産的基礎・金銭的信用を有すること
<一般建設業>
次のいずれかに該当しておくこと
①自己資本の額が500万円以上
②500万円以上の資金調達能力があること
③許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績を有すること
<特定建設業>
次のすべてに該当すること
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
※財産的基礎に関しては、新規申請時あるいは更新申請時に要件を満たしていれば大丈夫です
・欠格要件等に該当しないこと
①成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ないもの
②建設業の許可の取消処分から5年を経過しないもの
③営業停止処分の期間が経過しないもの
④禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないもの
⑤法又は一定の法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないもの
⑥暴力団員でなくなった日から5年を経過しないもの
⑦営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号の一に該当するもの などなど・・・
・営業を行う事務所を有すること
①固定電話、事務機器などを備えていること
②建物外観または入口などで商号又は名称が確認できること
③建設業の許可票を掲げていること
④専任技術者が営業所に常勤してもっぱらその職務に従事していること などなど・・・
役員などが1人欠格要件に該当した場合は、役員から外すことで取消は免れることは可能です。
ただし、提出書類に虚偽などがあった場合は全体で判断されますので、取消を免れることはできません。
故意に虚偽や重要な事実を記載しないことは当たり前ですが、その経緯は考慮されない点には注意が必要です。
役員になる人物が故意もしくは忘れていて5年以内に処罰を受けていたことを会社側に伝えなかった、などの理由で、結果的に書類に重要な事実が記載されていなかった場合でも、不正な方法で建設業許可を取得しようとしたという判断になってしまいます。
例えば事業承継やM&Aをする場合、経管の要件は満たしているか、あるいは専技となる人が退職しないか、もし退職するなら代替要員はいるのか?という点については注意していきたいところですね。
建設コンサルタント 登録要件
・登録を受けようとする登録部門ごとに技術管理者がいること(建コンに関し専任であること)
※地質調査業の技術管理者、建設業の専任技術者、建築士事務所の管理建築士等を兼任することはできません
・財産的基礎又は金銭的信用を有すること
資本金の額が500万円以上であり、かつ、自己資本の額が1000万円以上である者
個人の自己資本の額が1000万円以上である者
・欠格要件等に該当しないこと
①精神の機能の障害により建設コンサルタント業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②登録を消除され、その消除の日から二年を経過しない者
③禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
④暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は刑法に規定される罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない
⑤暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
欠格要件に該当しないことは、当たり前ですが、財産的基礎には要注意です。見落としがちだと思うからです。建設業と同じく、更新時の貸借対照表をみると、「アレレ~?要件を満たしていない!」ということもあり得ます。十分に注意しておきましょう。
測量業 登録要件
・登録しようとする営業所(常時、測量の請負契約を締結する事務所)ごとに測量士を1人以上置くこと
・欠格要件等に該当しないこと
①破産者で復権を得ない者
②2年以内に測量法違反で登録取り消しを受けたもの
③2年以内に測量法違反で刑事罰を受けたもの
④本人が未成年者や成年被後見人で、その法定代理人が上記の要件に該当する者
⑤法人でその役員のうちに上記①~③に該当する者
一つ目の要件は誓約測量士ですね。上記のとおり、営業所ごとに1人以上を配置しておくことが必要です。うっかり誓約測量士を転勤させてしまうと、代替要員がなければ営業所の廃止届を出すことになります。
建築士事務所 登録要件
・業務を行うための事務所が確保されていること
※バーチャルオフィスでは登録できません
・管理建築士が常勤で在籍していること
建築士として3年以上の設計等の業務に従事し、登録講習期間が実施する管理建築士資格取得講習を受講が必要です
・一定の欠格要件に該当していないこと
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②成年被後見人または被保佐人
③禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
④建築士法の規定に違反して、または建築物の建築に関し罪を犯して罰金を支払い、刑の執行を終わり、又は執行を受けなくなった日から5年を経過していない者
⑤建築士の資格が取り消されて、取り消しの日から5年を経過していない者
⑥建築士事務所閉鎖命令を受け、その閉鎖期間が満了していないもの
⑦暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
⑧暴力団に支配されているもの
・定款の目的に「建築物の設計・工事監理」が含まれること(法人の場合)
・納税の証明が取れること(法人の場合)
管理建築士には、管理建築士講習の受講が義務付けられており、一度修了すれば再度受講する必要はありません。ただし建築士法の規定により、建築士事務所に所属する全ての建築士は、3年ごとに定期講習を受講する義務が課されています。もし定期講習を受講していなければ、戒告または2カ月間の業務停止処分等の対象となりますので、注意が必要です。
都道府県によって、登録要件は異なることもありますので建築士事務所登録を申請する都道府県が公開している建築士事務所登録の手引きで確認するようにしてください!
労働者派遣事業 許可要件
・特定の企業にのみ派遣を行う目的でないこと(専ら派遣)
・派遣労働者の雇用管理を適正に行なう能力を有するものであること
<派遣元責任者の要件>
①未成年者でなく、欠格事由に該当しない
②法令に従って派遣元責任者が選任されている
③生活根拠が安定している
④健康状態が良好である
⑤不当に他人の精神、身体および自由を拘束するおそれがない
⑥派遣元責任者が名義貸しでない
⑦成年に達してから3年以上の雇用管理の経験を有する(派遣社員としての業務経験などを有する場合の例外あり)
⑧派遣元責任者講習を受講している(許可申請前3年以内の受講)
⑨外国人の場合は在留資格を有する
⑩派遣元責任者が日帰りで往復できる地域に派遣を行なう
⑪派遣元責任者が不在の場合の臨時の職務代行者があらかじめ選任されている
<派遣元事業主の要件>
①労働保険、社会保険の適用など、派遣社員の福祉の増進が見込まれる
②生活根拠が安定している
③不当に他人の精神、身体および自由を拘束するおそれがない
④公衆衛生、公衆道徳上有害な業務に就かせるおそれはない
⑤派遣元事業主が名義貸しでない
⑥外国人の場合は一定の要件の在留資格を有する
⑦派遣社員の教育訓練に関する計画が適切に策定されている
⑧教育訓練の施設、設備が整備され、実施責任者の配置等、能力開発体制の整備がなされている
⑨教育訓練にあたって派遣社員から費用を徴収しない
・個人情報の適正管理のために必要な措置が講じられている
・財産的基礎の要件を満たしている
①資産の総額から負債の総額を控除した額(「基準資産額」という)が派遣事業を行なおうとする事業所ごとに2,000万円以上
②「基準資産額」が負債の総額の7分の1以上
③自己名義の現金・預金の額が事業所ごとに1,500万円以上
・組織的基礎の要件を満たしている
①組織の指揮命令系統が明確であり、混乱を生ずるものでない
②登録制の場合は、300人あたり1人以上の登録者業務の従事者が配置されている
・事業所の要件を満たしている
①風営法で規制する風俗営業が密集するなど事業運営に好ましくない位置にない
②事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上ある
労働者派遣事業の許可のハードルは、なんと言っても財産的基礎だと思います。申請時に添付する決算書類がこの要件を満たしていなければ、許可を更新することができません。もし満たしていない場合は、増資等で対応するしかありません。
古物商 許可要件
・主たる営業所を設けること
・営業所ごとに常勤の管理者を置くこと(特別の資格などは必要なく誰でもなることができます)
・欠格事由に該当しないこと(申請者本人・法人役員・管理者)
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②罪の種類を問わず禁錮以上の刑に処せられ、刑の執行が終わってから5年を経過しない者
※執行猶予期間中の者も含みますが、執行猶予期間が終われば許可を取得可
③窃盗、背任、遺失物横領、盗品等有償譲受け等の罪で罰金刑に処せられ、刑の執行が終わってから5年を経過しない者
④古物営業法違反のうち、無許可、許可の不正取得、名義貸し、営業停止命令違反で罰金刑に処せられ、刑の執行が終わってから5年を経過しない者
⑤古物営業法第24条の規定により、古物営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
⑥古物営業法第24条の規定により、許可の取り消しに係る聴聞の期日等の公示の日から、取り消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しない者
⑦集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
⑧暴力団員又は暴力団でなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団以外の犯罪組織の構成員で、集団的又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
⑩暴力団員による不当な行為等に関する法律により公安委員会から命令又は指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から3年を経過しないもの
⑪住居の定まらない者
⑫心身の故障により古物商等の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定める者
⑬営業について成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
※古物商の相続人が未成年者であり、その法定代理人が欠格事由に該当しない場合は許可を受けることができます。
※婚姻している者は成年擬制により成年者と同一の行為能力を有することになるので、許可を受けることができます。
※法人の場合は、許可を受けるのは法人であるため、その法人の役員が未成年であっても許可を受けることができます。
※管理者については例外は無く、未成年者が管理者になることはできません。
⑭営業所または古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者としての管理者を選任すると認められないことについて相当な理由のある者
⑮法人役員に上記のいずれかに該当する者があるもの
各種許認可・登録要件を見ていただけると分かると思うのですが、欠格事由はほぼ同じですよね。
必ず入っているのは暴力団員関係はアウト。
あとは破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者もアウトですよね。
(なかなか破産者が財産的要件を満たすのは難しいですよね)
現在許可・登録を受けていても更新の時期に満たしていなかった!など大問題に繋がりかねません。知らなかったではすまされないのが現実です。ある程度組織体制が整っている会社ならば、社内で横断的に許可・登録要件を把握しておくことが必要だと思います。事前に把握しておけば、仮に許可・登録がなくなってしまっても、次回の許可取得・登録に向けて準備ができるはずです。
人事を尽くして天命を待つではないですが、早め早めの行動を心がけて、事業を継続していきましょう!
手続・申請でお困りのことがありましたら当法人までご相談ください。
少しでも負担を軽減し、お客様のサポートをさせていただきます!